タイの主要な環境問題:原因と取り組みを紹介

タイの環境問題

タイ旅行をしていると、道路にゴミが落ちていたり、分別が全くされていなかったり、川の水がとても汚かったりと日本との環境レベル・意識の差に驚くこともあるのではないでしょうか。

今回、環境省や企業の文献を参考に、タイの環境問題を簡単にまとめてみました。

最近の動向

タイ政府は、新型コロナからの経済復興の一環として、BCG経済(Bio、Circular、Green)の促進に注力しています。産業界もSDGsやESG投資への関心を高めています。タイ政府は、環境政策を進めるために国民全体への意識浸透に注力しています。

気候変動においては、以下の目標を立て・取り組みを行っています。

  • 目標: 2030年までにGHG(温室効果ガス(Greenhouse Gas))排出を現状維持と比較し、20~25%削減
  • 取り組み: NDC(国が決定する貢献)達成のためのロードマップ、気候変動マスタープラン(2015~2050)の策定

以下では、タイの主要な環境問題の現状・原因・対策を紹介します。

タイの環境問題 ①水質汚濁

現状

水質汚濁: 生活排水と産業排水による河川や湖沼の汚染が深刻化しています。チャオプラヤ川への汚染物質は、生活排水が75%、工業排水が25%から発生していると言われています。

チャオプラヤー川下流域には食物の残りや飲料容器などの漂流物がたくさん浮いており、上水道の資源や農業用水としての使用にも支障が出ています。

チャオプラヤー川
チャオプラヤー川

水不足: 川の水を上水道の資源として使うことができないため、都市部での水不足も発生しています。

原因

下水処理場の不足: 工業排水用のインフラ整備は進んでいますが、生活排水対策のためのインフラ整備が遅れています。

工業排水: 規制や監視がゆるく、工業団地などからの排水が公共水域に直接放流されていることがあります。長年に渡って流れ込んだ重金属による汚染も存在しています。

対策

規制の強化: 工場排水基準の強化、12種類の重金属を含む27項目の全国一律基準値の設定を進めています。

インフラ整備: 下水処理場の建設と改善を進めています。

監視と管理: 公害管理局による水質、大気、廃棄物の管理と監視の強化を進めています。

タイの環境問題 ②大気汚染

現状

自動車排気ガス、産業活動、野焼きによる都市部の大気汚染が深刻化しています。チェンマイでは世界最悪の大気汚染が発生しています。参考:NNA ASIA「観光に打撃続き、健康懸念も

チェンマイの大気汚染
チェンマイの大気汚染

原因

自動車排気ガス: 自動車やバイク台数の増加に伴い、排出ガスも増えています。規制の強化や公共交通機関網の整備を進められてはいますが、追いついていない現状があります。

産業活動: 火力発電所や製鉄、セメント製造など特定施設からの排出があります。

野焼き: 農業廃棄物やごみの野焼きによる大気汚染が悪化しています。タイでは対策が進んでいますが、カンボジアやミャンマー、ラオスなどの隣国から影響を受けていることもあります。

対策

大気汚染規制: 1995年に大気中の環境基準(CO、NO2、SO2、PM10、O3、鉛など)に関する規制が強化されました。

固定発生源の排出基準: 産業施設に対する15種類の大気汚染物質の排出基準を設定しています。

自動車排気規制: CO、HC、ディーゼル黒煙に対する排出基準と新車への触媒浄化装置の義務化を進めています。

野焼き規制: 農業廃棄物の野焼き禁止と規制強化をしています。

筆者、チェンマイ坂田がお世話になっている村の山火事防止活動に密着しました。こちらからどうぞ。

タイの環境問題 ③廃棄物処理

問題

不適切な最終処分場: 現在の処分場の多くは処理能力や技術に課題を抱えています。また、新たな処分場の建設や改善が進んでいないです。

有害廃棄物の処理不足: 有害廃棄物を適切に処理できる施設が限られており、国内に数か所しかない状況です。ほとんどの有害廃棄物は工場内に敷地内保管されるか、一般廃棄物と混ぜて不法投棄されている状況です。

原因

ゴミの急増:経済成長に伴い、発生量が増加しています。

インフラの整備不足: 発生量の増加に対して、一般廃棄物の処理施設の整備が遅れています。回収・処理能力も追いついていません。

また、処理コストの観点から、焼却を伴わない直接埋め立て処理が主流となっています。最終処分場の残容量や処分場周辺での臭気などの問題も発生しています。

バンコク以外の地域では処理予算や処理技術の不足などもあって、収集された廃棄物の約4割程度しか埋立処分が行われていないようです。残りは野積み後、露天焼却されており、衛生的にみて適正処理されているとはいえません。

自治体職員の知識・能力不足: 廃棄物処理を主導する自治体職員の知識が不足しており、正確な廃棄物データが得られていない問題もあります。

国民の理解不足: 国民の意識や理解は年々向上していますが、廃棄物処理への理解と協力が不足しています。

ポイ捨てされるごみ
ポイ捨てされるごみ

対策

インフラ整備: 国家固形廃棄物処理マスタープランとロードマップの策定と実施しています。

意識向上: 国民への環境教育と理解促進に取り組んでいます。

法的整備: WEEEリサイクル法や自動車リサイクル法の導入をしています。

タイの環境課題に対する全体的な課題として、環境政策の「実行」が不十分です。PDCAサイクルにおける、Plan(計画)はできていることが多いが、Do(実行)の段階では課題が大きいです。

参考文献

在タイ日本大使館「冒頭発表 タイにおける環境政策の近況と今後の課題

環境省「第1章 タイにおける環境問題の現状と 環境保全施策の概要

JBIC「環境規制

DOWAエコジャーナル「タイ王国とタイの環境問題(1) ~タイの環境問題~ 」


以上、簡単にタイの環境問題を簡単にまとめました。

実際は本記事書いている内容だけでなく、更に細かく・複雑に問題が絡んでいるかと思います。

タイに住んでいく中で、問題の深堀、解決策の検討を進めていきます。

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