ヤティーさん村の保育所再建、一時完了のご報告

皆さまにご支援いただきました、ヤティーさん村の保育所の改修工事が一段落し、子どもたちがまた学校へ通えるようになった様子をご報告します!
今回の活動の経緯
2025年3月28日、ミャンマー中部で発生した大地震は、タイにも大きな影響を及ぼしました。
タイ北部チェンマイのカレン族の村「フアイイーカン村」でも、人的被害はなかったものの、保育所が被災しました。村の子どもたち32名が通っていましたが、通園できる場所を失ってしまいました。


自治体の担当者に相談したところ、建て替え工事の開始は1〜2年後になるとの回答がありました。自治体からは当面、村から離れた他の村の保育所に通うようにと言われています。
しかし、他の村の保育所へ通うことは2〜4歳の幼児にとって大きな負担です。また、体調不良や事故があった場合に保護者がすぐに駆けつけられなくなります。バイクでの送り迎えも必要となり、仕事との両立が難しくなってしまいます。
そこで、ヤティーさんは自分たちで保育所の改修工事を行うことにしました。詳細記事👇
被災状況をレポートしたYoutubeはこちら
募金の募集
私はヤティーご家族、フアイイーカン村の方には大変お世話になっているため、「何か力になれたら」と募金活動を始めました。ヤティーさん&私の友人のSwitraさん、神戸でカフェを営む前田さんと活動を推進いたしました。
今回、クラウドファンディングなどで募金を募らせて頂くことも検討しましたが、迅速な対応が必要であるため、フアイイーカン村へ直接来た事がある方へのお声掛けとInstagramへの投稿を行いました。
結果として、ヤティーさんの村を訪れた方だけでなく、訪れたことのない方からも温かいご支援をいただき、合計で164,000バーツ(約72万円)が集まりました。当初の目標額の約1.6倍となります。改めて、ご支援いただいたすべての皆さまに心より感謝申し上げます。

中には、村を訪れた小学生のお子さんが貯金箱から寄付を出して下さるなど、心温まるエピソードもありました。皆さまの想いが少しずつ集まり、かたちとなりました。
保育所改修工事の完了まで
保育所の再建工事は、村の集会所・村の集会所兼物置として使われていた施設を改修して進められました。4月中旬に工事が始まり、学校が再開する5/13までの約1か月で無事工事が完了しました。
工事着手時と完了時の比較を交えながら、状況をご説明いたします。
【建物外観】


左側の建物が子どもたちが勉強をする校舎、右側が食堂となっています。


資材については旧保育所の資材で使えるものは使いつつも、屋根、窓、壁などは古くて安全性が低かったため、皆様の募金を活用して新しく購入いたしました。皆様から迅速に募金を頂けたため、早く進めることが可能となりました。
【校舎内観】


天井もきれいに張り直しています。床も当初はタイルが張られていなかったのですが、子どもたちが安全に遊べるようにタイルの張替えも行いました(左側写真は既にタイルの張替えが完成しています)

子どもたちは校舎の中で元気に走り回り、遊んでいます。


また、3〜4歳の上級生は勉強もしています。
【食堂】


食堂が設置された場所は当初何もなかったのですが、村の方の工事で0から建設されていきました。
左写真の地面は土・石となっていますが、工事完了後はタイルがきれいに張られています。

現在は子どもたちが楽しく昼食を食べる食堂として使われています。

みんなちゃんと座って食べていました。
【手洗い場・トイレ】

手洗い場とトイレも村の方が1つずつ組み立てていき、完成しました。


手洗い場も0からの建設となりました。水道管もうまく張り巡らせています。

昼食前には子どもたちが手を洗います


トイレも無事に完成しました。
動画の方が雰囲気が伝わりますので、ぜひご覧ください!!
おまけ 保育所完成時の儀式

保育所再開の3日前、お寺からお坊さんを呼び、保育所の完成・子どもたちの安全を祈る儀式が行われました。

村人が集まり、お坊さんの説法を聞きます。


儀式のあとは、食事も振舞われました。
募金の使用用途
以下、募金の使い道を簡単にご紹介します。Switraさんと協力し、324,180バーツが集まりました。(私が集めた寄付:164,000 バーツ、Switraさんが集めた寄付:160,180.86 バーツ)
- 建材・資材:161,276 バーツ
- 屋根:40,000 バーツ
- 砂利・砂:20,000 バーツ
- 電気工事:26,700 バーツ
- 資材引き取りのためのガソリン代:1,000 バーツ
- 貯水タンク:4,900 バーツ
- 労働費:65,000 バーツ
寄付残高は 8,104 バーツ
これから

皆様のご支援のおかげて、無事に学校を再開することができました。一方で、全ての工事が完了したわけではなく、校舎の仕切り等も必要となります。前田さんにイベント等で支援を呼びかけていただきながら、少しずつ推進予定です。
保育所再建活動は一旦一段落となります。
改めまして今回は皆様からのご支援をありがとうございました。想像を超えるご支援をいただき、ヤティーさん・私ともに感謝の気持ちで一杯です。
簡単ではありませんが、ヤティーさんの村へお越しいただき直接保育所もご覧いただけると嬉しいです!
ヤティーさん村のツアーはこちら
編集後記
今回支援している中で感じたことや保育所に行って学んだことを書きます。
保育士さんから聞いた話
保育士をやられているペーさんとお昼ごはんを食べながら、保育所の現状を聞いた。
- 村の保育園は「自治体」のモノ。保育士さんの給料も自治体から払われる。村の子どもたちの保育費は自治体で賄われるため、親御さんたちは保育費を払わなくてよい。
- ペーさんは保育士として働き、約5年。フアイイーカン村から約15分のノンタオ村出身。半年前からフアイイーカン村で働き始めたが、ちょうど地震が来てしまった。子どもが好き。
- 保育所の制度的には子ども5人に対して1人の先生がいることが望ましい。一方で、現在は子ども30人弱に対して先生が2人という体制。「4歳の子どもは成長しているが、2歳のこどもたちはしっかり面倒を見なければ」と話していて、保育士がもう1,2名増えればと話をしていた。
- ここは私も2人だと、なかなか厳しそうだと思った。村のこどもたちは暴れまわっているので、どうしても目が届かなくなってしまうことはありそう。
- 一方で、日本の子どもと保育士の割合については、「0歳児が一人当たり3人、1、2歳児が一人当たり6人、3歳児が一人当たり20人。4、5歳児が一人当たり25人」(出所:NHK「保育士の配置基準 4、5歳児 76年ぶりに見直し」)「1人で20人の3歳児の面倒を見るのってかなり大変だなあ」と思ってしまった。
- ペーさんは「将来は日本の保育士さんとも交流をしてみたい。私はタイの保育所のことしかしらないので、日本の保育所を見てみたい。そして良いところを取り入れたい」と話してくれました。今後、ヤティーさん村を訪れる際は保育所訪問もプログラムの1つに入れたいと考えております。お越しいただいた方はお気軽にアドバイスをお願いします。
- その他坂田が保育所へ行って感じたこと・学んだこと
- タイ人は食事の前に「いただきます」を言わないが、保育所では昼食の前に感謝の言葉を先生に続いて子どもたちも話していた。
- 日本の安全基準と比較すると、危ない点はある。手洗い場や階段の角などに頭ぶつけたら危ない。
- 一方で、食器用の洗剤は保育士さんだけが知っている場所に置いていて、子どもたちが誤って飲み込まないようにするなどの安全管理はされていた
- 3歳からタイ語の文字や英語のアルファベットを勉強している。3歳からアルファベットを勉強しているの早いなと思った。
スピード感
今回、工事が完了するまでのスピードがとにかく速かった。
「ヤティーさんが自分たちで保育所を再建すると決めるまで」
「村の方がボランティアで工事を始めるまで」
「募金を活用して資材を購入するまで」
「工事を始めてから完了するまで」
どれも驚くほど速かった。
安全基準は日本と比較すると劣るけれども、保育所を再建すると決めてその日までに工事をする。100%完成とは言えないけれど、実際に子どもたちが勉強して使う。その後、少しずつ直していく。
私のような日本人は、つい”完璧”主義でモノゴトを進めたがるが、今回のように”完了”主義で進める姿勢の大切さを実感した。