タイルー族の歴史と文化:タイの少数民族に迫る
タイルー族は、主に中国南部のシップソンパンナー王国を中心に居住するタイ系民族です。中国、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナムにまたがる地域に暮らしています。
彼らはタイ・カダイ語族に属する「タイルー語」を話し、独自の文化と伝統を持っています。
本記事ではそんなタイルー族を紹介します。
※ 本記事はインターネット上の情報と私が実際にタイルー族の方から聞いた話をベースに執筆しております。タイに住む全てのタイルー族の方に当てはまらない内容があることをご承知置きいただけると幸いです。
タイルー族の歴史
タイルー族は元々、中国の南部に位置する雲南省のシップソーンパンナー地区に起源を持ちます。タイルー族は中国の影響を受けつつも独自の王国を築いてきてきました。
2000年のデータによると、シップソンパンナーには約28万人のタイルー族が住んでいます。ラオスには2015年の国勢調査で約12.6万人、タイには約8.3万人のタイルー族の方が住んでいると言われています。出所:Chiang Mai a la Carte
タイに住むタイルー族の人は1900年代にシップソンパンナー(中国雲南省)から、北タイへ移住してきた方が多くいます。
その以前、チェンマイエリアはビルマに支配されていました。その後、ビルマ王朝の支配から脱したものの、戦争で減ってしまった人口を補い、チェンマイを再開拓するため、タイルー族の人が移住してきました。
タイルー族の人は、チェンマイ、パヤオ、ランパーン、ランプーン、ナーン、チェンライ県などに住んでいます。
タイルー族の言葉
タイルー族には独自の「タイルー語」があります。
あるタイルー族の方にタイルー語と標準タイ語がどの程度同じかを聞いてみました。
標準タイ語とタイルー語は約10%同じ、タイルー語と北タイ語は約20%同じとのことでした。
タイルー族の衣装
タイルー族はその織物や手工芸品で有名で、特に女性が手掛ける伝統的な織物はとても美しいです。
お祭りの日には全員で色を揃えた衣装を着て、踊りを披露することもあります。
タイルー族の伝統的な住居は、高床式の住居です。1階は機織りなどの仕事場、2階が寝室やキッチンとなっています。
タイルー族の寝室は、白色と黒色の蚊帳に別れています。白の蚊帳は子どもや未婚者向け。黒の蚊帳は夫婦用です。
タイルー族の食事
伝統料理
カーオトンコン:伝統お菓子“ข้าวต่องก๋อง”
材料は黒もち米と白もち米です。もち米粉を水と混ぜて捏ね、円状にしたものを揚げます。
タイルー語で「カーオトンコン」は”円”を意味します。”円”は友好関係を築くという意味を持っており、村に来客者が来た時にもてなされるお菓子です。カオトンコンを食べることによって、村の仲間、兄妹、家族の一員になることを意味します。
こんにゃくサラダ
村の近くにある山で採れたこんにゃくを使います。こんにゃくを伝統的な方法で麵状にして茹で、玉ねぎやトマト、ハーブ、ナッツ、唐辛子と和えて食べます。
日常料理
タイルー族の食事は北タイ料理の系統の食事となります。一方で、タイルー族はミャンマーにも居住していることから、ミャンマー料理と似たものがあります。
また、タイ北部では納豆を食べる文化もあります。豆にパクチー、ニンニク、玉ねぎを加えて食べます。
より自然に近い環境で過ごしているタイルー族はカエル、セミ、野鳥、生牛肉のたたき、豚の血を固めたものなど、日本人にとっては馴染みのない食べ物も食べます。
タイルー族と自然
タイルー族は昔から森と川を中心とした自然と共存して生きてきました。
また、自然を大事にする活動の一例として乾期の山火事を守る活動も行っています。タイでは経済成長に伴い、農作物の需要が増しています。生産量を増やす手段として野焼きがあるのですが、その野焼きから大気汚染や山火事が起きています。
あるタイルー族の村では、村の方で協力して山火事を守る活動をしています。
筆者が山火事を守る活動に密着した動画は👇
タイルー族の今
今日では、タイルー族はグローバリゼーションの影響を受けつつありますが、伝統的な生活様式を保持している方も多く存在します。
特にタイ北部やラオスの一部地域では、タイルー族の村の文化を外部の方に体験してもらう取り組みもあります。
マニタビではタイルー族の村を訪れるツアーがあります。詳細はこちらから👇
参考: